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概況と提言


環境政策および環境管理に関する世界のシステムは、正しい方向に向かっているが、その進捗は遅すぎる。卓越した政治的指導力や、世界の全地域と分野をカバーする強い協力関係が、既存の政策手法と新しい政策手法の両方を機能させるために必要となるだろう。

GEO-2000, 364ページ


 環境関連のいくつかの成功例
 

*  オゾン層は、モントリオール議定書の結果、今後半世紀の間に概ね回復すると期待できる。

*  国連気候変動枠組条約と京都議定書によって、地球気候変動への対応の最初の国際的な一歩が踏み出された。

*  市民が、環境問題に対して、これまでより強い関心を持っている。多くの国で、当局を動かそうとする運動が一般化している。

*  世界の多くの主要産業の自主的な取り組みが、資源の使用を抑え、廃棄物を無くしている。環境に良いことはビジネスにも良いという素晴らしい発見は、産業自体が元来環境問題の大きな原因となってきた流れを逆転させるのに、大きく役立つだろう。

*  先進地域の政府は、多くの主要な都市において大気汚染を減らすのにきわだって成功しており、幾つかの重要な地域では、ゼロ・エミッションという目標が夢ではなくなった。

*  ヨーロッパと北米の一部では、森林の破壊がくい止められ、回復しつつある。

*  ローカル・アジェンダ21の取り組みは、地域社会と政治機構を同じように取り込み、持続可能な開発政策の策定や実施への効果的な道筋を証明した。

 

概況

 ここ数年来、環境問題への取り組みは、注目すべき成功を収めてきました。しかし、主要な環境政策の枠組みの立ち上げに長い時間を費やしている間に、持続可能なシステムへの合理的で周到な転換のための時間が、どんどん少なくなっています。多くの問題について、極めて緊急の対応が必要です。

  • 地球規模の水循環は、今後数十年間に予想される需要を満たすことができそうもない。
  • 土地劣化が農業の生産性と可能性を押し下げている。これらの損失は、農地の拡大や生産性の向上によってもたらされた改善の多くをうち消している。
  • 熱帯林の破壊の速度が速く、取り返しのつかない損失を防ぐことができない。失われた森林を取り戻すには何世代も必要であり、森とともに失われた文化は決して回復できない。
  • 環境悪化が目に見えるようになるまでには時間がかかり、政策立案者の反応も遅いため、地球上の多くの種が、すでに失われたかあるいは絶滅の危機に瀕している。かつて地球上に見られた多様な生物種の全てを保存するには手遅れである。
  • 多くの海洋漁業では、過剰捕獲が続けられており、資源の回復は遅い。
  • 人間の活動により、世界のサンゴ礁の半数以上が危機に瀕している。そのうちのある程度は生き残るであろうが、多くは手遅れである。
  • 開発途上地域の多くの大都市において、大気汚染問題が深刻化し、多くの住民の健康を損ねている。
  • 温室効果ガスの排出量増加により、地球温暖化を防止するのはおそらく手遅れであり、更に、京都議定書において合意された多くの目標は達成されないかもしれない。

提言

 このような好ましくない方向を転換し、環境への脅威を軽減するための方策と行動を提言することが、GEOの使命の一つです。この為、GEO−2000では、これまでの分析結果を勘案し、UNEPによる提言をまとめました。これらの提言は、4つの分野に焦点を当てています。


UNEPは、これらの4つの横断的な分野における、政策開発及び行動の拡大と協調が、現在の、あまりにも多くの緊急な環境問題に圧倒された手詰まり状態を打開することに、大きく貢献すると信じている。

GEO-2000, 364ページ

知識の欠落を埋める

 GEO−2000は、地球規模や地域間の取り組みの相互作用や影響について、総合的な認識が不足していることを示しています。現在の環境情況に関する情報は、不十分なものばかりです。ある地域の開発が他の地域に及ぼす影響や、ある地域の夢や願望が、地球の共有財産の持続可能性と両立するかどうかを分析する手段は、ほとんどほとんどありません。

 もう一つの深刻な脱落は、新たな環境政策とそのための支出が、期待した結果を生むかどうかを見極める努力の不足です。このような知識の欠落は、環境的な持続可能性への道筋と、我々が現在進んでいる方向の両方を見えなくする、集団的な目隠しの役割を果たします。4つの分野における行動を提言します。

  • 環境に係るデータと情報の改善
  • 政策の実績についての評価
  • 貿易と環境の関連性についての分析
  • 国際的な資金の流れがアジェンダ21の目標にどの程度対応しているかの分析

根本的な原因への対応

 多くの環境問題に対して、狭義の環境政策は効果がなく、それ故、より根本的な原因に対処する方策を見いだす必要があります。例えば、資源の消費は、環境悪化の鍵を握る要素です。この問題に対応する政策手段は、人口増加の抑制、消費パターンの転換、資源利用効率の改善及び経済の構造改革です。理想的には、このような方策は、同時に裕福な生活水準を維持し、且つ、恵まれない人々の生活水準を向上させ、持続可能性を高めなければなりません。これは価値観における物質消費からの脱却を必要とします。このような転換が無ければ、環境政策は限定的な改善しか及ぼすことはできません。3つの分野における行動を提言します。

  • 社会的・経済的な困難が生じないよう配慮しつつ、環境を損なう効果のある補助金の削減
  • エネルギーの効率の改善
  • よりよい生産技術の採用の奨励

統合的な取り組みの実施

 我々が環境を考える道筋や、管理する方法を変える必要があります。第一に、環境問題を思考の主流に取り込む必要があります。環境的な思考を農業、貿易、投資、研究開発、基盤整備、財政に関する意志決定に取り込むことが、効果的な行動のための最良の機会となります。第二に、分野別の問題を離れた幅広い社会的配慮を包含した環境政策が、多分に永続的な効果をもたらすでしょう。第三に、環境保全のための、特に地域関係および多国間環境協定に関する、国際的な行動をよりよく統合していくことが必要です。3つの分野における行動を提言します。

  • 環境を考え方の中心に取り込む
  • 統合的な環境管理の採用
  • 国際的な調整の改善

行動の結集

 環境問題の解決は、関係する個人、NGO、産業界、自治体及び政府、国際機関の全ての共同作業として達成されなければなりません。全ての関係者を巻き込むことの必要性が、GEO−2000を通じて強調されています。具体的な例としては、多国間協定におけるNGOの役割の増大、所有権問題に関する関係者の参画、野心的かつ自主的な環境目標の設定における特定の製造業や資源産業の指導的役割などがあります。行動の提言は5つの分野です。

  • 環境活動への市民の参加の促進
  • 地方のグループやNGOの役割の強化
  • 産業界、特に中小企業に対する環境目標の設定の奨励
  • 政府による環境活動の活性化
  • 国際機関への支援拡大と、それらの機関の活動の調整促進


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